STAFF BLOG

2016.06.14

【コラム】「証」を無視した処方の副作用は当然

 img_01

 数年前のことであるが、小柴胡湯に関する副作用の問題が新聞で大きく報じられました。驚いたのは「小柴胡湯の年間売上高が400億円にのぼり、漢方薬全体の売り上げの27%を占め、年間100万人が飲んでいる」といった記事の内容でした。

 小柴胡湯は今から1700年前、漢代の名医、張仲景が著した『傷寒論』に記載されており、少陽病という発熱性疾患に用いられてきた処方です。張仲景がこの話を聞いたら果たして何というでしょうか?われわれ中医師にとっても、およそ信じ難い数字です。

 日本でこのように極端な使われ方がされるようになったのは、慢性肝炎に対する効能が認められて以来ですが、これには大きな問題が含まれています。

Shanghanlun

 慢性肝炎を漢方的立場からみるといろいろな証型に分類され、治療にはそれぞれの証に対応した処方が用いられます。
 小柴胡湯は「一部の慢性肝炎の、ある時期の、ある症候群に効果がある」ということを理解すべきです。漢方医学でいう証を無視して、小柴胡湯のような燥性のある生薬を数多く含む処方を長期間連用すれば、副作用が出るのは当然といえます。
 慢性肝炎に対しては柴胡の燥性を和らげる当帰や、芍薬を配合した逍遥散や加味逍遥散のような処方を中心に用いるべきだと思いますが、いずれにしても漢方薬を西洋医学的病名治療で使うという最初のボタンの掛け違えを是正しないかぎり根本的な解決策はなく、今後、第二、第三の小柴胡湯問題が発生する恐れは十分あります。

 これを防ぐには漢方医学の体系的学習の徹底が急務であると考えます。

20141229102517772

袁世華(新潟薬科大学 特別招聘教授)
昭和16年中国の吉林省生まれ、長春中医学院医学部卒業後、同大学の助手、講師、助教授、教授を歴任。
1988年3月来日、東邦大学医学部心療内科、産婦人科、北里大学医療衛生学部の客員研究員,情報科学研究所東洋医学研究室の主任研究員を経て、現在、杏林中医薬情報研究所所長を務め、日本全国各地で漢方医学の講義、新聞や健康雑誌の原稿の執筆を行う。
著作は『金匱要略訓解』、『西洋薬の副作用の中医治療』、『心身医学概論』、『婦人の宝・当帰』『ペイチー茶驚異のパワー』、『健康増進とリスク研究』、『痛みを根元から断つ』 、『漢方薬よく分かる本』『漢方から見たノニ』など多数。